(僕独8) 帰れるかもしれない 〜All's Well That Ends Well.〜
もう十分かもしれない
スイス到着3日目は昼まで軽くスキーをして過ごした。これで今回の旅は終わることにした。
あとはスイス バーゼルへ戻り、夜には寝台列車に乗ればドイツを越えてアムステルダムに到着する。
バーゼルへ移動。
グリンデルワルドに来て本当に良かった。また来たい。またくたくたになるまでスキーをしたい。
バーゼル到着。
余裕を持ったとはいえ夜まで時間があるので折角なのでバーゼルで観光することにした。
バーゼルはただアムステルダムに乗り換えの為だけに来たのだがちょっとわくわくしていた。
というのもここはなんと歩いてフランス、ドイツにいけてしまう国境付近の街なのだ。北に大きな河が流れており河を挟んでフランス、ドイツに橋で渡れたりしてしまうというわけだ。
こんなお手軽に国を渡れる感覚は日本にはないのでわくわくしてしまった。
まずは三カ国の中心へ。バーゼル側から河の中心まで細長く道が続いており、行き止まりにちょうど三国の中心の柱が立っている。河の真ん中でいきどまりなので実際はここからお手軽にドイツに行ったり、フランスに行ったりはできないらしい。
なので柱の周りをくるっと周ることでドイツ・フランス・スイス一周ができてしまうというわけ。5秒で周れてお手軽だ。だが周辺に何もないのでつまらない。つまらないが妙に感動があった。
ドイツへ行こう
次に行きたかったドイツへ。この旅の目的の一つ、『ドイツでビールとソーセージを食べる』を叶えるためだ。
歩いてドイツに行く。特に止められず素通りした。
ドイツに着いたものの街の雰囲気はバーゼルとあまり変わらなかった。
そこらのカフェでとりあえず目的のビールとソーセージを頼み満足。
デパートに足を運びおもちゃ売り場を物色。
なぜそんなことをするかというと、ドイツはボードゲームやカードゲームが盛んなおもちゃ大国ということを知っていたからだ。独創的なカードゲームがいろいろ作られている。最近流行っているゴキブリポーカーや人狼ゲームもドイツ発。お土産にMonopolyのカードゲームを1セット買った。
ドイツを2時間ほど堪能し橋をわたってフランスへ。
フランスは逆に住宅地ばかりで何もなかった。ワインがどうしても買いたかったのだが全く見つからず、日が暮れてからようやくスーパーを見つけワインを購入できた。
正直なんの意味もない行為だが適当に1000円で買ったワインが日本で3000円だったのでまあ得だった。ここでは水のようにワインを飲む分、本当に安い。
アムステルダムに戻ろう
そろそろバーゼルに戻らないといけないが腹が減った。
日本では生肉のタルタルステーキはめったに食べられないので駅舎内で適当に入ったバーでタルタルステーキを注文。
ゆっけが載った生肉なのだがこれがトロッとしていて日本人好み。
予想通り美味かった。
ドイツ・フランスとお土産を買ったので、最後にスイス土産にVictrinoxのナイフが欲しくなった。昼に一旦覗いた店に行くと閉店準備をしていた。
扉を叩くと若いお姉さんが『帰って』と手振りする。
「I will go back Japan today!!」
僕強い。必死の叫び。
このくらいではもうへこたれなくなっていた。
お姉さんは悩みながらもため息をつきながら入れて買わせてくれた。迷惑な行為だけど言うだけ言うのが大事だなと改めて学んだ。
寝台列車に乗り込むとスペインとは違いコンパートメントでティーンエイジャーの女の子達が数人キャッキャしながら乗り込んできた。僕を見て迷惑そうな目になる。
居心地が悪くなってきたのでウインドブレーカーを頭から被り寝た。余計に怪しかったと思う。
日本に帰ろう
モスクワ行きの飛行機の隣は日本人女性だったがやけに肩などを自分から離すので、寝台列車の件もあった分傷ついたのだが、モスクワに入ってからトイレに入ると理由がわかった。
顔が日焼けでボロボロになっていたのだ、皮がサングラスのあとでくっきりと剥がれかかっており、ひと目見たらミイラだ。道理で出国の際あんなにジロジロ見られたと思った。
成田に向かう飛行機の途中、今回の旅を振り返ったら全てが鮮明だったことに驚いた。忘れた瞬間がまったくないのだ。そして情けないアムステルダムから笑顔になれたパリ、喧嘩したスペイン、一人で行くと決めたロンドン、出会いがあったスイス、どれも忘れようがなかった。
この旅で自分もだいぶ図太くなったなと思う。元々が心配性なコミュ障だったので、人間的成長ってこういうものかもしれない。実際社会人になってから役に立っている気がする。スイスでスキーをした話もずっと自慢してる。
一歩踏み出さないとやっぱり変わらないんだなと思った。
しかし、安堵のあまり頭がくらくらした。本当に移動ばかりだったし、旅の5割は移動していたイメージだ。
電車にはこれでもかというくらい乗ったが、ゆったりした覚えはない。目的を結果的に果たしたのか怪しいところだ。
とはいえ、
成田には無事着いた。心配していた親も迎えに来てくれた。
部屋の椅子にどっかり座って大きくため息。
「...生きて帰ってこれて良かった」
夜は醤油を舐めた。夢でも電車に乗っていた。
(やっと終わった)